代表理事をしております橋本和明と申します。
私は長年家庭裁判所において家庭裁判所調査官として勤務し,少年事件,家事事件を担当してきました。2006年から花園大学の教授として就任し,2022年から国際医療福祉大学の赤坂心理・医療福祉マネジメント学部及び大学院で非行臨床や犯罪心理学,虐待や発達障害などについての研究や講義をしております。
ところで,2009年から裁判員裁判制度が始まり,国民の中から選ばれた裁判員が裁判官とともに重大事件を審理することになりました。そんな中で,事案の重大さを考慮するのはもちろんですが,それだけではなく,なぜ被告人がこのような事件を起こすようになったのかというメカニズムを一般の方にもわかるように,心理学的に明らかにしてほしいとの要望が強く出されるようになりました。そこで,裁判所あるいは弁護人から私の方に犯罪心理鑑定の依頼を受けることが多くなったわけです。犯罪心理鑑定では,被告人の性格や生育歴,家族関係を詳しく調べ,時には心理テストを行いながら,それが犯行とどのように結びつきがあるのか否かを明らかにし,それを法廷で証言するのです。この犯罪心理鑑定はより適切な判決をするためには非常に有効であるとこれまで評価を得てきました。
このたび一般社団法人「司法心理研究所」を設立しましたのは,そのような犯罪心理鑑定が実施できる鑑定人の人材育成と,鑑定の依頼があれば迅速に対応できるような組織の構築を図りたかったというのが大きな理由です。また,今後は犯罪や非行だけに限らず,子どもの親権の適格性や面会交流における紛争の問題解決などをはじめとする家事事件,いじめやハラスメントの事件にかかわる心理的鑑定や支援などに対しても心理職をはじめとし,さまざまな対人援助職との協働が必要となってくると思います。われわれの司法心理研究所はそんな分野においても積極的に活動をしていきたいと考えております。どうかご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
司法心理研究所 代表理事 橋本和明